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No Promises Await at Journey's End

松岡正剛『多読術』読了

読書に関する本を最近はよく読んでいます。そのうちの一冊が今回紹介する「多読術」です。

多読術 (ちくまプリマー新書)

多読術 (ちくまプリマー新書)

著者は読書家としても知られている松岡正剛さんです。本の最初の中に写真も出てきますが、この人は自宅にものすごい蔵書を抱えているそうで、本棚とかズラっと並んでいるようです。

この本を手に取ったのは偶然です。JR八王子駅の北口に「セレオ」という昔「そごう」というデパートだった場所があるのですが、そこの本屋さんをブラっと歩いているときに見つけた本です。

松岡正剛という人が読書家として有名なことも知りませんでしたし、この本が10年も前に出ていることも知りませんでした。偶然の出会いがあるのも読書の魅力でしょう。

著者の読書に対する様々な見解が述べられていく内容ですが、その中でも私が特に印象的で覚えておきたいと感じたことをいくつかご紹介します。

掩巻(えんかん)

難しい言葉ですが、本を少し読んだら本を閉じて読んだところを頭の中で振り返ってみる、という読書の方法です。頭の中で振り返ることにより、本の内容をより深く理解し、記憶に定着させる効果があるのではないかと感じました。

この「掩巻」という作業は以前書いた「展開」という行為と近い気がしています。

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読んだ内容を頭の中で再構成する、という行為としては同じです。これこそが読書の楽しみなのです。読んでそれっきり、というのは非常にもったいないです。本は読んだら展開する。掩巻する。

慎独(しんどく)

調べてみると他の意味もあるようですが、この本で紹介されている「慎独」の意味は「読んだ内容や体験したことを共有・提供する」という意味です。本を読んで得た経験や知識を占することをということから「慎独」と言うそうです。

これは今まさに私が書いているこの記事が当てはまりますね。一般的に読書や勉強などでもアウトプットすることで記憶が定着する、と言われることが多く、特に誰かに見られるようなところへアウトプットするのが良いそうです。ブログなどに読書に関する内容を書く人が多いのも「慎独」の体現なのかもしれません。

速読について

著者は速読については「早食い競争」と一刀両断します。その真意としては、どんな本も早く読むことだけに拘ってしまうからダメなんだとか。誰でも自分の興味のある分野や理解できる分野に関しては自然と読むのが早くなるので、意識して速読などする必要がないということを述べています。

私個人も速読に関する本は何度か読んでいますが、本をたくさん早く読むことに意義が見出せませんでした。少し前の情報ですが、毎日新刊がどのくらい出るのか調べてみたところ200冊という結果にたどり着きました。

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月にすると6,000冊。年間だと約7万冊の新刊が発行されているというのです。実際に書店で見かけるような本はもっと絞られてくると思いますが、それでも日々膨大な数の本が生み出されている状況で、10分で1冊とか謳って速読を勧める教材が多いですが、毎日200冊、月に6,000冊を仮に読めたとしてもこれから出る本についてカバーできるだけで、過去に出版された本は読めません。

要するにいくら速く読んでも全ての本を読むことなどできないのです。速く読むことの意味は特にないと思います。知識だけ得たいのであれば、読んだ人に対価を払ってその本に書いてあるポイントを教えてもらった方が速いです。それはもう読書ではなく、読書の意義は、突き詰めて考えれば「掩巻」や「慎独」になってくると言えるのではないかな、と思います。

速読で速く読めると言っても、この本の著者のような膨大な本を読んできた読書家には到底及ばないでしょうから無理に速く読む必要はなく、自分が出会った本を読むことが大事だと考えています。

まとめ

  • 掩巻
  • 慎独