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No Promises Await at Journey's End

江戸川乱歩と名作ミステリーの世界 第2号『D坂の殺人事件』

序。

前回記事で江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』を読み始めた話を書きました。

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例の「創刊号だけ安いやつ」です。有名なのはディアゴスティーニの模型などですが、同じようなシリーズは結構あります。今回の江戸川乱歩のシリーズは《アシェット・コレクションズ・ジャパン》というところが出しています。

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この手のものは創刊号からいくつかの号は書店で買えますが、それ以降は定期購読に移行しないと全部そろわない仕組みです。定期購読をしてもらうために創刊号が破格の値段、と言ってもいいと思います。

ゲームで言えば体験版のようなものでしょうか。最初にお客の心を掴む必要があるため創刊号にはメジャーなコンテンツが来ることが多いです。

今回の創刊号で言えば、《明智小五郎》の登場する『屋根裏の散歩者』が表題作として収録されている他、江戸川乱歩のデビュー作の『二銭銅貨』などいくつかの短編が収録された本が499円で手に入ります。

特に定期購読しようとか考えてはいなかったのですが、たまたま休日に書店に足を運んだ際に2号が発売されているのを見かけて購入してみました。

2号と3号は1,999円、4号以降は2,249円となります。ハードカバーの書籍なので価格的にはそれほど高いという印象はありませんね。個人的には電子書籍版を作って欲しいところですが、綺麗な装丁の書籍で名作を堪能するという趣旨からは外れてしまいますね。

『屋根裏の散歩者』感想

2号の『D坂の殺人事件』を買いましたよ、という趣旨の記事ではありますが1号の『屋根裏の散歩者』は読了しているので先にそちらの感想を述べておく必要があるかと思います。

率直に言えば「予想以上に引き込まれた」の一言に尽きます。江戸川乱歩は明治生まれで大正や昭和初期に活躍した文豪ですから文章は漢字の使い方や言い回しなど難しい表現も多いです。それでも思っていたよりは読みやすいですし、この時代のインフラというか世の中の生活水準というか一般人がどんな生活をしている時代なのか、などあまり知らなくても読めました。

  • 『屋根裏の散歩者』
  • 『二銭銅貨』
  • 『赤い部屋』
  • 『蟲』
  • 『鏡地獄』
  • 『押絵と旅する男』

の6つの短編が収録されています。いわゆる「事件が起きました。いろいろ捜査をして犯人を突き止めました。犯人は誰でしょう」という形式ではないです。どちらかと言えば「犯人が自分で事件の内容を語る」か「犯人視点で事件が語られる」という形式です。

とは言っても刑事ドラマ「古畑任三郎」のように犯人が最初からわかっていてトリックを刑事や探偵が暴くという展開でもなく「犯人の行動や心理を読者が共有・共感する」という感じが近いかな、と思いました。謎解きやトリックに読者が頭を使うような場面はないと思います。

私が個人的に一番興味深かった話は、表題作『屋根裏の散歩者』と『蟲』です。どちらも犯人視点で語られて犯人のとった異常な行動を追体験するような感覚が味わえますが、純粋に読んでいて「面白かった」と感じました。『蟲』の方は少し残酷というかグロテスクというか気分が悪くなるような展開も終盤に出てきますが、犯人の異常性が余すところなく表現されていると思います。

結。

まだ定期購読は考えていません。ただ、先々の刊行予告を見る限り2〜3は読んでみたい作品はあるので2号『D坂の殺人事件』を読んでから決めようかと思います。