残すところあと2巻。15年以上前の作品なのですが、全く色褪せず。携帯やパソコンなどの技術的要素は時代とともに変化していくものの、人の考え方や生活様式はそれほど変わらないものなのかも知れません。
- 作者:柏枝真郷
- 発売日: 2012/12/19
- メディア: Kindle版
この小説を読みながら改めて思ったことがあります。日本の警察のドラマなど見ても、基本的に捜査一課とか組織全体でひとつの事件を捜査する様子が描かれていますよね。
ところが、この小説で描かれているニューヨーク市警察の殺人課の刑事は2人1組のコンビでひとつの事件を捜査していきます。同じ課の別の刑事たちは同じくコンビで別の事件を追います。所轄の刑事たちが関わることも多いですが、捜査本部とかが立ち上がって大人数で捜査会議などする日本の警察のドラマなどとは異なります。
まあ、実際そんなものなのでしょう。
さて、今回の事件やセシルとドロシーのプライベートを通してひとつのキーワードを挙げるならこれしかありません。
風邪。
舞台は年が明けた2004年の1月のとある深夜。ドロシーとセシルが事件現場へ急行すると、薬物でハイになった女子高生が事件の被害者の遺体のそばで保護されます。
このシリーズの中でも何度か出てきたMDMAという合成麻薬によるものかと思いきや、なんと風邪薬(咳止めシロップ)からDXMというものを抽出したものが流行っているんだとか。今回の事件ではDXMという薬物が絡んできます。
一方、ドロシーやセシルのプライベートでも「風邪」が猛威を振るい、ドロシーは喉が痛く声がハスキーになっていたり、セシルの恋人のフェイが熱を出したり、1月のニューヨークは大寒波が訪れて風邪をひく人が続出しています。
そんな中でドロシーは前巻のラストで「ふられた」オーガストと1ヶ月ぶりに再会するのですが、相変わらず「ふられた」ままの状態。オーガストはシアトルに出張へ行ってしまったようです。
いつもの攻めの姿勢のドロシーが「丸くなって」しまったような違和感を感じるセシル。捜査で移動中にドロシーが運転で出れない携帯にかかってきたオーガストからの電話に出る羽目になります。
おまけにドロシーへの伝言を頼まれ、これから捜査の山場に差し掛かるところでいつ伝えるか頭を抱えます。
結局、最後は事件を解決してからドロシーをオーガストのアパートへ送っていき、セシルも「オーガストに言いたいことがある」と一緒に部屋に乗り込んでいきます。
オーガストとドロシーの恋の行方、そしてセシルとドロシーのパートナーの関係はどうなるのか、最後の10巻で全て完結します。