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No Promises Await at Journey's End

『赤いモレスキンの女』読了

モレスキンとは宗教である。

たかがノートに3,000円近く払っても、書く内容は数百円の大学ノートに書くことと何ら変わらない。ノートの値段が高いからといって書く内容の価値やレベルが高くなるわけではない。

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昨年末にJALとコラボしたモレスキンのノートを購入しておいた。飛行機に乗って旅に出る時は必ず新しいモレスキンを1冊用意して持っていく。緊急事態宣言が発令されている今は旅には出れないが、いつの日か必ずJALコラボのモレスキンを片手に飛行機に乗る日が来ると信じている。

これまで数多くのモレスキンにその時々の思いを書き殴ってきた。あとで読み返そうと思って書くのだが、一度も読み返さないまま数年が経過し、何冊ものモレスキンが溜まっていく。

iPhoneでDayOneというアプリに食事や行った場所、思いなどを書き連ねて6〜7年が経つ。そのうち4〜5年は毎日欠かさずに記録を残している。

On This Day という機能でその日の1年前、2年前、3年前・・・と同じ日の過去のメモが連続して見れる機能がある。これで去年の今頃はこんなことしてたなぁとか、もうあの時から3年経つのか、などと振り返ることができる。

しかし、不思議と数年前に考えていたことと、今現在考えていること、やりたいこと、不満に思っていることは変わっていない。

人間は1日に6万のことを考えるという。そのうち95%は昨日と同じことを考え、80%はネガティブなことを考えているそうだ。

数年前の自分と今の自分が同じことを考え、同じことを悩み、同じことを不安に思っていても何ら不思議はない。これから10年、20年先も同じことを考えていくのだろう。

だから昨年の秋頃に書き終えて溜まっていたモレスキンのノートを数十冊まとめて捨てた。たぶんほとんど同じことを繰り返し書いていたのだろう。捨ててしまっても同じことをまた新しいモレスキンに書いているに違いない。

『赤いモレスキンの女』はそんなモレスキンを捨てずにカバンへ入れておいたおかげで、見ず知らずの男に勝手に読まれてしまったものの、最終的には盗まれたカバンが帰ってくる話だ。

女性のカバンを見つけ、中を漁り、モレスキンに書かれた女性の赤裸々な思いを読んでしまう背徳感。そして持ち主を見つけ、自宅まで届けようとして不意にその女性の部屋で3日間、飼い猫の世話をすることになり、最後は持ち主の女性と結ばれる本屋の店長の男の物語である。

モレスキンの存在よりも、カバンを見つけた男も無くした女性も「読書」が日常に溶け込んだ生活を送っていたことが印象的だ。モレスキンは彼女の内面を知り、単に遺失物を警察に届けるだけで終わらずに持ち主を探す行動に出たきっかけにすぎない。持ち主を見つけるのにモレスキンは全く役に立っていない。

1冊くらいはちゃんと自分の想いを書いておき、カバンの中に忍ばせておこうと思った。